天下の大ドロボーとの出会い

天下の大泥棒との出会い 本当にあった事件簿
天下の大泥棒との出会い
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出会いは20代の時だった

まだ私が20代、26歳の時に初めて留置場勤務となった時の お話です。警察学校を卒業して、一番最初に配属になった警察署で、交番勤務を4年やりました。昔は、それが普通でした。今では交番勤務を1~2年やって内勤、刑事とか、生活安全課とか、交通課などに異動することもあります。まあどちらが良いのか、わかりませんが・・いずれにしても、当時は そんな感じでした。私は、交番の時に、看守勤務の助勤というものを何度かやりました。助勤というのは、本来の看守勤務員が休暇で休んでいる時に、その代わりに看守勤務をやる、というものです。結局一人では、勤務ができない為、このような勤務体制になるんです。これは、パトカー勤務でも同じです。で、何度か看守助勤をやって思ったこと。それは、自分も看守をやってみたい、という感情でした。警察官になったばっかりの頃は、はっきり言って一般の方と、ほぼ同じ感覚です。なので、留置場に入っている人=悪い人=普通じゃない、そして留置場内では、話もしない?という感じのイメージでした。また、交番勤務の時、外で勤務をしていると、やれ交通取締のやり方が隠れて汚いだの、苦情を言う方が多かったので、きっと留置場内も凄いんだろうな・・と思っていたのです。ところが助勤で留置場内に入ると、先輩の看守勤務員の方が、被留置者(留置されている人を こう呼びます)と普通に話をしているんです。しかも、今後のことについて、優しく指導したりしているんです。で、留置されている人(以下留置人と書きます)は、先輩看守の言うことを、ちゃんと真剣に聞いていて、最後には お礼を言っていたのです。それを見て、はっきり言って驚きました。留置場って、そういう感じなの??と。それで留置人が本当に改心して更生してくれるのだったら、凄くやりがいのある仕事だと感じたのです。その時から、看守をやってみたい、という思いが強くなりました。それからは留置場の異動希望を毎年書きました。そしてやっと、26歳の時に留置場に異動になったのです。それはそれは嬉しかった。まあ留置場希望って、あんまり居ません。だいたい刑事や生活安全課、交通課、警備課といった内勤の方が人気があります。私は、どれもあまり興味が湧かなかったんです。なので、変わってると、よく言われました。でも本人は超嬉しいんですから、いいですよね。今回は、そこで出会った留置人の お話です。

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出会いは20代だった

私は26歳の時に看守になり、その時逮捕されて留置場に入ってきたのは、その彼でした。名前はここではルパンとしましょう。まあルパンは捕まりませんけどね。で、このルパンは当時23歳位だったと思います。年が近かったんですね。なので、話が合いました。当時は留置場内に、いろいろな本がありました。漫画から雑誌から週刊誌や専門書まで。で、私は車が好きで、車の雑誌をよく買って見ていました。そのルパンも車が好きで、よくそんな話もしました。で、読み終わった車の雑誌を家から持ってきて、勤務の時にルパンに貸したりしていました。今では絶対ダメですよ!もう大昔の話と思って読んでください。そう、言うの忘れていましたが、この彼は窃盗で逮捕されてきたのです。なので、名前はルパンにしました。で、その時の私の相勤者は上司の巡査部長で、Y部長という人で、その人とその彼は、あまり相性が良くなく、いつも言い合いになっていました。その先輩部長も口が悪くて、留置人とケンカになることは よくありました。このルパンも例外ではありません。

お茶をかけるルパン

その当時、留置人は一日中お茶が飲めました。大きなヤカンにたくさんお茶を作って、飲みたいと言ってきたら、コップに入れて飲むことができたのです。今はありませんよ!まあ その当時は良い時代だったのかもしれませんね。で、その日、私の上司であるY部長とルパンが揉めました。Y部長が上から目線で、ルパンに話掛けたのです。その瞬間、ルパンはY部長にお茶を掛けました!Y部長は激怒です!もう大喧嘩になるところでしたので、必死で止めました。まあY部長を引き離すってことですけどね。相手は鉄格子の中ですから。まあY部長は、そのまま看守台に戻ってイライラしていましたが、私は、ルパンのところに行き話をしました。

掃除するのはオレなんだよ

ルパンに、「だめだよ。部長にお茶なんて掛けちゃ!」と注意です。ルパンは「emaちゃんには、やらないから大丈夫だよ。」と言いました。私は「違うって。掃除するのは おれなんだよ。」!!「あ!そっか!ごめん・・・もうやらないよ。」といった会話でした。そう。なにが言いたいかと言うと、頭ごなしに怒鳴って注意しても、留置人はいう事なんて聞きません。どんなやり方でも、いうことを聞いてくれれば、それでいいんです。目的が達成されればいいんです。それを、つまらないプライドで、留置人と普通に話なんてしたくない、とか思って勤務している警察官がいます。でも、それって、見えるんですよ。留置人にも。気持ちとか心って、見えるんです。わかる人にはわかるはず。わからない人は、いつまでも、わからないと思います。ルパンとは、そういう感じの関係性でした。スタンスは、あくまで「罪を憎んで人を憎まず」です。これは警察官をやっていた間は、私の中で、ずっと信念として持っていました。今でもそうですけどね。

15年ぶりの再会

それから、15年後、とある警察署の留置場に勤務していました。その警察署は、県内では大きな警察署で年間500人近くを留置する警察署でした。ある日の当直勤務の朝、留置管理課に入り留置人名簿を見ると、どこかで見たことがある名前がありました。うそ?ほんと?そうです。先ほどまで話にでてきたルパンの名前です。なぜ え?と思ったかというと、以前ルパンとあった警察署と、この警察署とは、距離が離れていたんです。なので、何故ここの警察署で捕まったんだ?という感じだったのです。ほんとにルパンかな?と思いながら、朝の挨拶まわりを始めました。というのは、私は、朝勤務が始まる前に、必ず留置人全員に「おはようございます」と挨拶をしていました。これは人として常識だと考えて勝手にやっていました。で、ルパンがいる13号室に行きました。はい。本当にルパンでした。ドアを開けた瞬間、彼もわかったようです。「ああああああー!!emaちゃん!!!久しぶりー!!」私「ルパン!(本当は下の名前です)久しぶりだなぁ。てか、なんで、ここにいるんだよ!」みたいな会話から始まりました。でも本当に懐かしく思ったんです。あくまで 「罪を憎んで人を憎まず」

ですから。本当に。この彼、実は まったく言う事を聞かないという噂がありました。別の留置人も「あれルパンでしょ?前、刑務所で一緒だったけど、全く言う事きかないで、いつも懲罰房に入ってたよ」というような。その後見ていると、確かに私以外の警察官の言う事は 全くきいていませんでした。なので、他の警察官が皆 私に頼んできました。あいつに、こう言ってくれ、とか。そんなこと自分で言えばいいじゃん と思いながらも、仕方なく 私は言う事をききました。まあ ルパンと話するのは 何も苦じゃなかったですから。

課長に猛攻撃



ある当直勤務の日、留置管理課長がルパンに対して、「おいルパン」としたの名前を言ったところ、ルパンは いきなり怒ったそうです。


「お前にルパンとか言われる筋合いはねぇーっ!」と。課長が、すぐ私のところに来て、その話をしました。「なんでema部長があいつのことルパンって呼んでも怒らないけど、おれがルパンって言ったら怒るんだろう?」と。課長に言いました。「課長、実はおれはね、前に別の署で一緒だった時に、向こうから おれのことを emaちゃんて呼んでいい?と言ってきたから、いいよ。じゃあ おれもルパンって呼ぶな。という会話をしたから、おれがルパンって呼んでも 大丈夫なんですよ。」と。実際そうだったんです。なので、彼のことをルパンと下の名前で呼ぶのは、私だけでした。課長は、「そうだったんだ・・それじゃあね・・」と納得していました。


ある日別の県警察署に移送になる

ある日、彼は隣の県警察署に移送になることになりました。というのは、余罪が そっちの警察署にもあるということで、移送になることになったのです。荷物の支度をして、護送員が来ました。ルパンは、ここでも、最初から反抗していました。「手錠がイテェーんだよ!」などなど。護送員も ほとほと困っていたので、仕方なく、「ルパン、元気でな。迷惑掛けないようにやれよ。身体に気を付けてな。」と声を掛けました。彼の目は少し濡れていたように見えました。それを見た時に、私もウルッっとしてしまったのを覚えています。そして彼は そのまま移送されていきました。その後、彼から手紙が届きました。内容は、いついつ、裁判なので、来てほしい、という内容でした。まあ そんなことは 当然できませんが。

まとめ

私が警察人生の中で、留置場看守係を長くやってきて、留置管理を希望してきたのは、こんな出会いもあったから、というのが本当です。退職した今でも、彼は元気でいるかな?とか、ちゃんと生きているかな?とか、思い出します。私にとっては、大事な財産だと思っています。楽しい時間を彼にもらったと感じています。いい思い出です。私より若いんで、ほんと、元気で頑張っていてほしいと願っています。 現警察官の方、これからなろうと思っている方へ「罪を憎んで人を憎まず」これは絶対に必要なことです。綺麗ごとでは ありません。実践してください。きっと気持ちは伝わるはずです。今まで、全ての留置人に気持ちは伝わったと思っています(精神的に病んでる方や性格異常な方は除く)。私に何かあったら、留置人皆が助けてくれると思っていました。なんか 面白いですけどね。ということで今回は、これでおしまいです。他にも 思い出に残る留置人が何人もいました。その人達については、また別の機会にお話します。では、また。

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